編: ミシマ社()
ミシマ社は、「原点回帰の出版社」として2006年10月に創業。東京・自由が丘、京都府京都市の二拠点で、「一冊入魂」の出版活動を展開中。取次店などを介さない「直取引」という営業スタイルで「一冊」を全国の書店に卸している。
ミシマ社創業20周年記念号
特集:おもしろいの風が吹く
正しさやわかりやすさが求められる時代に、「おもしろい」を徹底追求。
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巻頭漫画 益田ミリ
編集長インタビュー
「おもしろいの風が吹かなくなったとき、どうしたらいいですか?」
松村圭一郎/伊藤亜紗/青山ゆみこ
本誌初登場!
伊藤紺/師田史子(『日々賭けをする人々』)/鈴木俊貴(『僕には鳥の言葉がわかる』)
ほかにも読み物続々!
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●特集に寄せて(巻頭文)
二〇二六年二月末、ホルムズ海峡封鎖。以来、原油の供給が大幅に途絶え、ガソリンは高騰、プラスチックの原料となるナフサが不足、建築資材が届かないため工事の見通しがたたない、こうしたニュースが日々とびかう。私たちの業界も例外ではない。印刷所の営業の方からは、「箔押しをされるようでしたら、かなり前もって教えてください」と言われた。素材の入手時期はわからないという。インキや洋紙の原料とて安定供給の保証はまったくない。くわえて、あらゆる物価が高騰する昨今、洋紙代や印刷費の値上がりはいつ落ちつくのか。倉庫にかかる費用も年々上がる一方である。
洋紙とインキ、種類、量いずれの確保も心許ない。統制経済さながらの状況下、私たちはものづくりをおこなっているのだ。――と、こう実感したとき、気づくのが遅いよ、という声がウチから響く。『中学生から知りたいウクライナのこと』を二〇二二年六月に、『パレスチナのこと』を二四年七月に出した。戦争はずっとつづいており、今、この瞬間も進行している。版元である自分たちが、自分たちのものづくりに影響が出始めた段になってようやく肌感覚で実感しているのではあまりにも遅い。
別の角度からも、危機は迫る。モノの入手困難がこのままつづけば、新聞、雑誌、書籍といったオールドメディアのデジタル化が進むのは必至。印刷所、製本所、製紙会社からすると、発注先が大幅に減ることが考えうる。『ちゃぶ台』には電子版はなく、紙の雑誌のみであるが、この雑誌で用いている仕様素材は今後も使えるのだろうか? そもそも産業全体が停滞、低下の一途をたどっている中での追い討ちだ。印刷機、製本機は来年、再来年も安定して稼働しているのか? 不安は募るばかりである。
......。いや、本誌12号の特集は、「捨てない、できるだけ」だったじゃないか。原油由来の製品が減っていくこと自体は、地球環境にとって悪いことではないはず。問題は、それに依存した形でしか回っていかない経済の構造のほうだ。私たちでいえば、原油に依存した材料を前提としたものづくりを根本からあらためる。そのときがきた。と捉えるのがいいのかもしれない。叶うなら、漸次移行を望む。倒産や失職の数ができるだけ少なくあってほしい。ゆるやかに、おだやかに。その間に、原油に依存しないあり方へと完全変革する。たとえば、この雑誌でいえば、大量とまでいかなくても、あるロットの生産が可能な「和紙」で印刷される。そうした紙が開発されるまで、種類、量ともに制約が増えるのは避けられまい。むろん、生産量自体を減らすことにもつながり、売上減を招く可能性が大だ。ただ、そうした痛みを全員がすこしずつ受け入れながらでないと、漸次移行は実現しないのも確かだろう――。
で、今号の特集がこちらです。「おもしろいの風が吹く」。
吹かせる、のではなく、吹く。どこかで必ず吹いている。その風を感じ、受け止め、かたちにする。今、出版社である私たちにできることはこれしかない、ここからやり直すしかない、そういう思いを込めました。――本誌編集長 三島邦弘
●巻頭 益田ミリ「人生においてひたむきに根気強く努力したコトについて」(漫画) ●特集1 おもしろいの風が吹く 〈編集長インタビュー〉 松村圭一郎「地域の『火種』によそ者の『風』が吹く」 伊藤亜紗「『おもしろい』が、一番正気に近い」 青山ゆみこ「『おもしろがれない自分』を、そのまま生きる」 土井善晴「なぜ日本の若者は世界で活躍するようになったのか――『おもしろいの風が吹く』を考える」(随筆) 鈴木俊貴×最相葉月「人間の『口笛』は鳥への片思い!?」(対談) 伊藤紺(短歌) 師田史子「お金を貸す人借りる人、お金を賭ける人失う人」(エッセイ) ちゃぶ台編集部座談会「ミシマ社に吹くおもしろいの風」 ●特集2 おもしろいの風が吹く 周防大島編 垂井綾乃「周防大島に吹く『おもしろい風』」(エッセイ) 内田健太郎「マイウェイ」(エッセイ) 中村明珍「島マジック」(エッセイ) ●連載 益田ミリ・平澤一平「バーワン」(漫画) 藤原辰史「社会の窓」(論考) 尾崎世界観「デート」(小説) 寄藤文平「瞬間の話。未来の描き方その8」(絵と言葉) 齋藤陽道「花の眼」(フォトエッセイ) 榎本俊二「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー PART14」(漫画) 書店、再び共有地(レポート) リバーブックス〈静岡・沼津〉 彩文堂〈京都・北区〉 三島邦弘(ブックレビュー) 編集後記