編: ミシマ社(ミシマシャ)
ミシマ社は、「原点回帰の出版社」として2006年10月に創業。全員全チーム(編集・営業・仕掛け屋)の仕事をするというスタイルで、東京・自由が丘、京都府京都市の二拠点で、「一冊入魂」の出版活動を展開中。取次店などを介さない「直取引」という営業スタイルで「一冊」を全国の書店に卸している。
*** 12/7(木)リアル書店先行発売! ***
特集:捨てない、できるだけ
私たちが日々している「捨てる」って、なんだろう?
捨てない生活、仕事、商売は、できる?
地球環境が「九回裏」の状況にある今、ゴミ処理最前線の町と本づくりの現場から探る!
・藤原辰史さんインタビュー「九回裏の『捨てる』考」
・「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」ってどんなところ?(レポート)
・土井善晴×大塚桃奈「『ゼロ・ウェイスト』ってなんですか?」(対談)
・平尾剛×中野遼太郎「下手でも『楽しい』を捨てない これからのスポーツ考」(対談)
*特集に寄せて
ほぼ毎号、特集を決めた直後には、この巻頭文を書き終えている。だが、今号はぜんぜん進まない。特集タイトルの「捨てない」は早々に決定したものの、自ら掲げた言葉に苦しんでいる。
なぜか。理由は明らかだ。捨てているからである。
家では、週に二度の燃えるゴミの収集日に三〇リットル分のゴミ袋に満杯のゴミを詰め、週一度のプラスチックゴミの日も袋はいっぱい。仕事では出荷不能となった書籍を断裁する。自分の足元を見れば、捨てない生活など不可能に思えてならない。「できるだけ」を付けたのは、わが心のうしろめたさ故だろう。
それでも、「捨てない、できるだけ」を特集しようと思った。
持続可能とか地球環境とか、大きな題目を掲げるまでもない。地球の資源を人間の都合だけで消費し尽くし、循環の流れを妨げる。そうした生活に別れを告げないといけないのは当然だ。今あるものを大切にする、大量生産大量消費を見直す。これらはずっと言われつづけているのに、大きく改善したようには思えない。なにより自分自身の日々のなかで。
こう考えたとき、まずは自社でできることからやろうと考えた。それで「捨てないミシマ社」というレーベルを立ち上げることにした。断裁対象となっていた再出荷不能の傷んだ書籍ばかりを集めて販売しようという試みだ。「捨てない、できるだけ」の実践である。
とはいえ、断裁する本はゼロにはならない。返品の過程で、「少し傷んでます」というレベルを越えて、折れたり汚れたりした本たちも出る。それに、そもそも、本をつくる過程でこそ、大量の廃棄物が出るのだ。今回、この特集を進めるなかで、あらためて知った。
きっと、まずは自分たちの関わりのあるところから、ちゃんと知ることから始めるしかない。そして、「捨てない」という選択肢だけでなく、「何を、どう捨てる」かも重要な気がしている。メーカーとしては、何を何でつくるか。余ったり、戻ってきた商品をどうするか、をもっともっと考えなければいけない。
知る、考える、実行する。うまくいかなかったことを改善する。そのささやかな行為の積み重ねが、九回裏逆転満塁ホームランを生む。とは限らないが、それからしか逆転が起きないのは確かなのだ。
――本誌編集長 三島邦弘
藤原辰史「九回裏の『捨てる』考」(インタビュー) 「『上勝町ゼロ・ウェイストセンター』ってどんなところ?」(レポート) 土井善晴×大塚桃奈「『ゼロ・ウェイスト』ってなんですか?」(対談) 益田ミリ「列車・箱・宝物」(漫画) 津村記久子「持たされるゴミと缶と保冷剤」(エッセイ) 伊藤亜紗「会議の研究(3) ワーカーズコープの共同想像」(論考) 平尾剛×中野遼太郎「下手でも『楽しい』を捨てない これからのスポーツ考」(対談) 斉藤倫「しっぽをなくした、むかしのじんるい」(児童文学) 齋藤陽道「沁みた記憶」(フォトエッセイ) 「シナノ印刷さんに訊く! 本づくり、どれくらいのゴミが出てますか?」(インタビュー) 「新レーベル『捨てないミシマ社』って何?」(お知らせ) 作・益田ミリ、絵・平澤一平「げっ歯の会」(漫画) 内田健太郎「ペー君と茶碗」(エッセイ) 榎本俊二「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー PART11」(漫画) 藤原辰史「捨てる民の精神誌 生態と消費のはざまで」(論考) 「書店、再び共有地」(レポート) Books & Cafeコトウ〈福島県福島市〉 ReBuilding Center JAPAN〈長野県諏訪市〉 中村明珍「頭髪は偉大、頭皮は憩いの場」(エッセイ) バッキー井上「あとはオボロ、オボロ影。そしてまた俺は、真俯瞰にいる。 第三部 そして俺たちは欲どおしい。」(コラム) 寄藤文平「図の話。未来の描き方その6」(絵と言葉) 三島邦弘(ブックレビュー) 編集後記