1500円+税
刷り:12刷
判型:210(横)×260(縦)角背上製
頁数:54ページ
発刊:2010年10月30日
ISBN:978-4-903908-21-2 C0095
益田ミリ(ますだ・みり)
1969年大阪生まれ。イラストレーター。主な著書に『ほしいものはなんですか?』 (ミシマ社)、漫画『すーちゃん』シリーズ、『週末、森で』『47都道府県女ひとりで行ってみよう』(以上、幻冬舎)、『ふつうな私のゆるゆる作家生活』 (文藝春秋)、『お母さんという女』(光文社)、『言えないコトバ』(集英社)、『アンナの土星』(メディアファクトリー)などがある。
平澤一平(ひらさわ・いっぺい)
1967年秋田生まれ。イラストレーター。中央美術学園卒業。東京ガスカレンダーコンペグランプリ受賞。第9回イラストレーション誌チョイス大賞にて大賞 受賞。TIS第1回公募大賞受賞。本や広告の挿画・装画、カタログ、プロモーションビデオのイラストレーションなど幅広く活躍中。半立体の木彫りの作品が 多い。本書は水彩画。
わたしの心を温かくしてくれる思い出のひとつに、小学校一年生のときの教室でのできごとがあります。
その日、クラスのみんなでくじ引きを引くことになりました。なにをもらうためのクジだったのかは忘れてしまったけれど、楽しい雰囲気だったから、きっとレクレーションの時間だったのでしょう。
担任は若い男の先生でした。順番にクジを引きなさいと先生が言ったので、生徒たちはいっせいに前に走っていきました。
だけど、わたしはグスグズしていて出遅れてしまった。クラスメイトの中で一番ビリ。
こんな最後に並んだら、もういいものなんてもらえない・・・。
そう思うと悲しくて、せっかくの楽しかった気持ちもしぼんでしまったのです。
すると、思ってもみないことが起こりました。先生がわたしのところにやってきて、みんなの前でこう言ったのです。
「一番最後に並んでえらかったな」
わたしは先生に誉められてびっくりしました。びっくりしたけど、すごくうれしかった。うれしくて、うれしくて、もう35年も昔のことなのに、思い出すと今でも温かい気持ちになるのです。
先生は、最後の子供までちゃんと見ていて、待っていてくれた。はやくはやくって言わないで、待っていてくれたのです。
励まされたり、なぐさめられたり、人はたくさんの言葉を受け取って前に進んでいく。でも、一番うれしいのって、誰かが待っていてくれたことじゃないかなとわたしは思うのです。
ながく読みつがれる絵本になることを願って。
2010年10月
益田ミリ
韓国語
中国・繁体字版