なんといふ空

なんといふ空

最相葉月
  • 定価 1,800 円+税
  • 判型四六判並製変形
  • 頁数224 ページ
  • 発刊2024年08月20日
  • ISBN9784911226087
  • Cコード0095
  • 装丁脇田あすか
取扱書店 一冊!取引所

本の詳細

*** 8/8(木)リアル書店先行発売! ***

『母の最終講義』刊行後に多く寄せられた「読んでみたい」という声を受け、
最相葉月の初エッセイ集、23年の時を経て復刊。

わが心の町 大阪君のこと(映画『ココニイルコト』原案)、
声の力、ある退社、私が競輪場を去った理由…etc.
今に繫がる、48本のエッセイ。

最相葉月デビュー30周年記念企画

●本文より
登場するほとんどのものは物理的には失われましたが、時が経っても変わらないものがあって、それがほかならぬ私自身なのだと気づかされました。(「復刊によせて」より)

目次

Ⅰ わが心の町 大阪君のこと/側溝のカルピス/星々の悲しみ/貝殻虫/わかれて遠い人/鬼脚の涙/時をかける人 Ⅱ おシャカさまに近い人/遠距離の客/パン屋の二階/あなたはだあれ?/旨いけど/女にはわからんけど/夢見るキャッチボール/まだ、虎は見える/ジュリー、ジュリー、ジュリー/音が気になるツボ/声の力/目で聞く人/左手は戦略家 Ⅲ テーブルマナー/歩きだす谷間/赤いポストに/蕾/昆明断想/白菊/二十万人の夏/彼女の疑問/黒いスーパーマン/ドラマチック・ドラマ/ふたりのМ/サルと呼ばないで/二十五年ぶりの宝塚/こんにちは赤ちゃん/本屋へ/お花畑の悪魔/知らない作家の本を読む人/二百円の災い/なんとお呼びすれば Ⅳ 壁の穴/ふくろふはふくろふ/夢/ある写真家/ある退社/記憶/心の時間軸/私が競輪場を去った理由/手紙 あとがき 復刊によせて

著者情報

著: 最相葉月(サイショウハヅキ)

1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、スポーツ、精神医療、信仰などをテーマに執筆活動を展開。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『青いバラ』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『証し 日本のキリスト者』『中井久夫 人と仕事』ほか、エッセイ集に『最相葉月のさいとび』『最相葉月 仕事の手帳』など多数。ミシマ社では『母の最終講義』『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)、『胎児のはなし』(増﨑英明との共著)を刊行。 最相葉月公式ホームページはこちら

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復刊に関して版元より

一冊入魂を掲げて2006年10月にミシマ社は創業しました。一冊入魂に込めた思いには、今の書き手の方々と今のことばで書かれた本を出していく、というのがあります。私たちが享受している出版文化も、その時代、その時代に、「生きた」書物が生み出されつづけたからこそ。先人たちのそうした努力に対する感謝の念を、今この瞬間にしか生まれない、この時代の書物を出すことで表してきたつもりです。以来、現在に至るまで、「ちいさな総合出版社」として、絵本、エッセイ、人文、文芸、多ジャンルにわたって約200冊の書籍を刊行しております。
また、当初より、絶版をしない方針を打ち出し、それを実現してきました(気合いで!)。
「なぜ、そんな無茶をするのですか?」とときどき訊かれます。理由は、いたって簡単。読者が読みたいと思ったときに読める。それを実現したいからです。こう思う背景には、私が少年時代、本屋さんを訪ね、ある本を注文したら、「絶版で手に入らない」と言われ、どうしても納得できなかった経験があります。「なんで、僕が買って読むから、刷ってくれたらいいやん」。少年の私は、こう言い返しました。あるロットで刷らないと、原価率が上がりすぎて、出版社の経営がきつくなる。今では当然と思っているその理由も、少年には理解できませんでした。その少年の思いに応えたい。それが、「絶版をしない」をつづけている理由の根っこにあります。
とはいえ、刊行点数が増えるにつれ、どんどん困難になってきているのが実情です。在庫がなくなるたびに増刷をしたものの、その後、ほとんど動かず、増刷分がそのまま残る。そうしたことがたび重なっていくのは、経営上、よろしくないのは論を俟たないでしょう。これからどうするか。この数年、ずっと考えつづけておりました(その解決への試みは別の機会に)。
そんな折、本年最初の刊行物である『母の最終講義』を出した直後から、著者である最相葉月さんの初エッセイ集『なんといふ空』を読みたいという声がいくつも聞こえてきます。私自身、読み返すと、『母の最終講義』のプレエピソードとも言うべきエッセイが少なくない。そして、2冊を読むことで、楽しみは倍増する! と実感しました。ですが、残念ながら他版元では絶版となっているため、ほとんどの人は読めません。ならば、この本を読めるようにすることは、『母の最終講義』を発刊した自分たちの責務である。一冊入魂で出した本を、しっかり、さらに生かすには、それしかない。このように思うに至りました。
こうして、初めて復刊という試みをおこなう次第です。
一冊入魂のあらたなかたち。多くの方々に喜んでいただけますことを願ってやみません。
(ミシマ社 代表 三島邦弘)