著: 網代幸介(あじろこうすけ)
1980年東京都生まれ、東京在住の画家。空想から生まれた物語や実際に見た夢が描かれた世界には、人、動物、架空の生物など愛おしいキャラクターがちりばめられており、観るほどに親しみが増していく。装画や演劇のビジュアルなど様々な仕事を手がけるほか、2018年には小学館より絵本『サーベルふじん』を刊行。作品集に『Огонёк アガニョーク』(SUNNY BOY BOOKS)がある。
網代さんの作りあげる劇場が好きでたまらないのです。本の中=劇場世界=架空でいっとき遊んで日常に戻ることがどんなに素敵な時間か。
人は絵をみたり、映画をみたり、演劇をみたりしてひととき現実世界を忘れ、描かれたものやその登場人物に感情移入したりして非日常空間のなかの別の自分をあじわいますよね。その楽しさを知ることで人生もより豊かになります。そんなことをより実感した御本でした。
――飯塚芽さん(ナディッフモダン)
網代さんの絵を見る人は、そこに物語を見つけてしまう。
ページをなめるように見ながら、頭の中で絵が動きだしていく。
「あ、こんなところに変な生きものがいる。かわいい」
「奇妙な生きもののランプだ。階段も階段の手すりもブヨブヨしてそう」
立入禁止のさびれた暗がりにも誰かからの手紙を待っている存在がいる。
それは幼年期にふとひとりになったときに訪れる感覚に似ていて、心地よいノスタルジーに包まれた。
――前田隆紀さん(かもめブックス)
かつての場所へ届けられた手紙
暗がりに響く奇妙な声
手紙といっしょに飲み込まれていく
心地よいふしぎの世界へ
フューズリ、ゴヤ、クートラスを彷彿とさせる暗闇のおはなし
――菅原匠子さん(曲線)
出ました!網代ワールド!すごい!!
絵をじーっと見てたらこの世界に吸い込まれていきそうでドキドキしました。ページを追うごとにゾクゾク、でも続きが気になってページをめくる手が止められません!手紙には何が書いてあったんだろう・・・
読み終わった今も夢心地です。網代ワールド、クセになりそう!
――中山理紗さん(長崎書店)
身震いするほどの濃密な絵の中に一瞬で吸い込まれる。まとわりつく霊魂たち。闇間にひびく笑い声。
彼らは待っている。何を待っているのかすら忘れてしまうほどの長いあいだ。その時が訪れて初めて、これを待っていたのだと気づく。夜が明けて、ふと、わたしも何かをずっと待っているのかもしれないと思った。
――黒田杏子さん(ON READING)
待ちに待った絵本がきたぞ、きしししし。
網代さんの世界は不気味で可笑しくいつも優しい。
こんなに恐ろしくて美しい館で、これほど妖しく魅力的な住人たちと出会ってしまったら、私はもうこちらへ戻ってこられないかもしれない!
――中川美里さん(本・中川)
暗闇の中にまだもっともっと奥行きがありそうで、この世界のことを知りたくて目を凝らして見ました。
――吉村祥さん(FOLK old book store)
よくGOしたぜ、ミシマ社さん。
網代幸介くんの「てがみがきたな」のゲラを見せていただいて、まず最初に思ったことです。動物でもなく、冒険でもなく、大丈夫だよ的なものでもなく、黒基調のアジロワールド絵本。パッと見、売れる気がしない(笑)。でもかっこいい。だからこそかっこいい。
配達人が真っ暗な洋館を開けるところからスタートする見開き15ページは、網代作品を物語として連続で楽しめる贅沢。ゾクゾクワクワクの緊張のなかで希望をなんとか探しだし、怖ければ戻ってもいいし、先を急いでもいい。いつのまにか好奇心に主導権を握られ、勝手にページがめくられる。もう止まらない。
網代くんから絵の説明を受けると、毎回その壮大な妄想世界のディティールに驚かされます。ひとつひとつのモノ、動物、人、風景、全てに細かな物語があり、例えば、この石像はかつての繁栄していた王国の王妃が飼っていた犬で、その時代の著名な彫刻家が彫ったモノです、というような具合に、絵の奥の尋常じゃない情報を知ることになります。
自分が目にしている絵は、ただの表面だけでワールドはもっと広いんだというのを潜在的に感じさせるからこそ、アジロ絵のファンは多く、その心を掴んでいるんだと僕は理解しています。
そんな網代くんの真骨頂な絵本『てがみがきたな きしししし』。この絵本が世に出ることに強烈なスリルを感じているとともに、いろんな人のいろんな感想を聞けることを楽しみにしています。早く本を手にしたい。原画を見てみたい。きしししし。
――ダイ小林さん(URESICA)
全ページ見開きで、網代幸介さんの画をこれでもか! と楽しめる一冊。
相変わらずの摩訶不思議な物語も、最後にはみんな愛おしい。
手紙を待っている、わくわくした気持ちを思い出しました。
困り顔の郵便屋さんの表情も最高です◯
――高橋和也さん(SUNNY BOY BOOKS)
絵から伝わってくる暗さや不気味さ、その中のユーモラスな雰囲気がとても好みです!
どんな怖い場所にも郵便配達人は手紙を届けないといけないなんてたいへんだなあ…でもいったいどんな人(?)が手紙を出したんだろう? そこにはどんなことが書かれているんだろう? と、むくむく想像がふくらむ楽しい絵本でした。
怖いこと奇妙なことって、なぜこんなに心惹かれるのか。自分でつづきのおはなしや手紙の内容を考えたくなります。
――山中由貴さん (TSUTAYA中万々店)
なぜ子どもたちはおばけにわくわくするのだろう。
なぜ僕たちはこんなにも手紙が好きなのだろう。
(そう、おばけだって手紙が好きなのだ)
絵本作家は「わくわく」も「好き」もずっと持っていて凄いなと思う。
網代さんの絵は子どもの頃に見た映画みたい。そして遊園地みたい。
ずっと心に残るであろう絵本です。
――吉川祥一郎さん(blackbird books)
めくり終わったページの隙間で、彼らがこっそり動いているような気配さえ感じる、幻想的で奇妙な世界。
おそろしくもどこか親しいような感覚は、いつか昔、ものの影や暗がりの中に何かが潜むのを見つけた記憶のせいでしょうか。
お話をたどりながら想像がむくむくとふくらむのは、暗くて広いお屋敷の中を進むことに似ているのかもしれません。
そこには何かがいて、そして何かを待っています。
画家・網代幸介さんが描く、てんやわんやな配達奇譚。絵本の扉をひらいたら、ゆうびんやさんと一緒に手紙を届けに参りましょう。
――藤林沙樹さん(恵文社一乗寺店 アテリ)