海岸線の歴史
5刷

海岸線の歴史

松本健一
  • 定価 1,800 円+税
  • 判型四六判上製
  • 頁数259 ページ
  • 発刊2009年05月02日
  • ISBN9784903908083
  • Cコード0020
  • 装丁クラフト・エヴィング商會
取扱書店 一冊!取引所

本の詳細

古代、山中に海があった。 今、海岸線はテトラポッドで埋め立てられ、消失しつつある。―― 異常に海岸線の長い、世界有数の国、日本。 その「海やまのあひだ」で、日本人はどのように生きてきたのか? 古代から現代までの海岸線の変化を追いながら、これからの「日本のあり方」も浮き彫りにする。 10年を超える構想期間と度重なる推敲を経てついに完成した、ありそうで無かった視点で語る、瞠目の日本論。

目次

はじめに 海岸線は変わる   トロイアの風景   かつての海岸が肥沃な平野のなかに   自然的条件による海岸線の変化   人為的条件による海岸線の変化   日本は「海岸線」の異常に長い国   横浜はかつて沼沢地もしくは海中だった   鞆の浦の盛衰 第一章 陸と海、神と人間が接する渚――古代から現代まで   「海岸線」は新しい言葉   海岸線の異常に長い国   白砂青松は昔からあったのか   砂浜が消えた   「泥の文明」という視点から   御弓神事のオール引き分け   国づくりの手立てとして 第二章 山中に海があった――古代を中心に   『土左日記』に出てくる大湊   黄帝・黄土・黄河   綱手によって曳かれる船   海の水が町まで入っていた   山の上に舟がのぼっていた   鬼のしたぶるい   大陸と日本の真ん中   鞆の浦   海辺に住んできた民族 第三章 海岸線に変化はなかったが――中世のころから   「海洋自由」の発想   九鬼水軍とカルタゴ   湊――水が集まったところ   水田と海岸線 第四章 白砂青松の登場――江戸時代  1…白砂青松のころ   灘と湊   米を運び出す湊   貞山堀   湊から灘へ   松前から箱館に替わった北前船の母港  2…清河八郎の旅   舟での大旅行   高山彦九郎と清河八郎   岡山から鞆の浦、宮島、牛窓へ   船の停泊所にあった城  3…開港と風景の変化   竹原の港   利根川で全部つながっていた   布川の風流   利根川の風景が一変した  4…西洋に開かれた港と白砂青松   ほとんど人のいない横浜村   国際港となった平戸   お椀型の和船とビア樽型の洋船   「繁船に宜しき」長崎   ベニスに匹敵する港・堺   石巻の繁栄   米づくりが白砂青松をつくった 第五章 『海国兵談』とナショナルな危機意識   ロシア船の来航   国防としての海岸線   蘭方医の登場   林子平の『海国兵談』 第六章 「海国」と海岸線の大いなる変化   ペリーが浦賀開港を要求しなかった理由   北前船の湊の没落   使い道のなかった港が軍港に   マラッカ海峡 第七章 砂浜が消失する現代   四大工業地帯と大きな深い港   海の見えない海に囲まれて   砂浜の消失 第八章 海へのアイデンティティ   海から遠のくエートス(心性)   「海国」という経験   ネーションの視座   海上のパトリオティズム(祖国愛=郷土愛) 終章 海岸線を取り戻す――ナショナル・アイデンティティの再構築を求めて   海岸線が奪われている   海を取り戻す、という発想   「漂流する日本国家」   『われは海の子』が成立しなくなって   文化は変容しつつ、滅びない   小説から海が消えた?   『桜島』と『幻化』   高度経済成長期は小説の転機でもある   どうして海を語らなくなったのか   おわりに――伊東静雄の「有明海の思ひ出」 あとがき

著者情報

著: 松本健一(マツモトケンイチ)

1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。現在、麗澤大学教授。評論・評論・小説など多方面で活躍。 著書に『白旗伝説』『北一輝論』(以上、講談社学術文庫)、『近代アジア精神史の試み』(岩波現代文庫、アジア太平洋賞受賞)、『開国・維新』(中央公論社)、『砂の文明・石の文明・泥の文明』(PHP新書)、『評伝 北一輝』(全五巻、岩波書店、司馬遼太郎賞、毎日出版文化賞受賞)、『畏るべき昭和天皇』(毎日新聞社)など多数ある。

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